こんにちは。トマト行政書士事務所の菊地です。
私の事務所は前から、独立開業希望の方からご連絡をいただいたり、見学にいらっしゃることが多くて(※1)、そうした方とお話すると
なんでこの人は、行政書士で独立開業したがっているんだろう……
と思うことが多々ありました。
広く世間では「行政書士は食えない」などと言われており、それはそのまんま当てはまるわけではないと思うのですが、少なくとも「簡単に稼げる職業」ではありません。
いらぬお節介でしょうけども。
今日は、私が個人的に「この人は行政書士としての独立開業、しなくてもいいんじゃないか」って思ったケースを書きます。
※1:トラブルが多発したため、事務所見学は有料で予約制となっております。料金含め、事前にご相談ください。
資格を取得して今までの人生を逆転したい?
行政書士は、国家資格ですけども、簡単に稼げるようになる仕事っていうものではありません。
「食えない資格だ!」って言われると、実際に食えてるのにと思いますが、「稼げる資格だ!」っていうのも違うと思われます。
安易に稼げる資格ではありません。
だから、
「お金をガンガン稼ぎたい!行政書士として独立開業で一発逆転だ!」
っていう人には、ちょっと待って!となります。
実際行政書士として10年ほど動いているわけだけど、他士業の先生方の話と比べると、工程数の割に報酬が安い。
つまり書類の数や、かける手間・時間の割に、報酬が安いと思うのです。
効率化してどうにかなるものじゃありません。もう根本的に違うとしか言えませんから、仕組みからして変えていく必要があるでしょう。
とりあえずの一般論としては(つまり例外を除いて)、「食えない」わけじゃないですけども、「誰でも稼げる資格じゃない」っていうことは間違いありません。
ちょっと例外と書きましたが、もちろん、例外はあるのです。
効率よくしっかり稼いでいる人もおられます。少数派ですが。
そもそも、行政書士としてしっかり仕事をしている人が少数派のような気がするのですが、これについてはまたそのうちどこかで。
メリットもあります。
行政書士は国家資格なので、一般的に、お客様からの信頼性はぐんと上がります。
「今まであまりいい職歴じゃなかった、このままじゃダメだから独立開業して平穏に暮らしたい!」
というのには、いいかもしれません。さほど稼げないですが。
こういう人は独立開業をよく考えたほうが……
では、特に私が今までお会いした中で、
「独立開業するまでもないような」
と思った方々を挙げます。
お勤めの人で、既に平均以上の年収を稼げている人
行政書士、稼ぐのは大変です。
既にお勤めで、ある程度の年収がある(平均以上)のであれば、それ以上を稼ぐのは商才があるなどでなければ難しいように思います。
稼げるようになるのに、通常は数年かかるでしょう。
工程数が多いし、独立開業するってことは、会社なら経理の人がやっていた会計記帳なんかも基本的に自分でやることになります。
勤めているときよりも、仕事をする時間はぐんと増えるのがふつうです。
時間は自由にならず、お客様の都合に合わせる必要がありますし。
今後年収が上がる見込みの職業に就いている人
こちらも同じ理由で。
これから稼げるようになる見込みがあるのなら、そのままお勤めを続けたほうがいいんじゃないかと思います。
とはいえ、独立開業したい!っていう理由は、人それぞれです。
お金だけじゃない、他の理由がある場合もあるでしょう。
資格学校などが、「簡単に自分のペースでけっこう稼げる資格」として行政書士を売り出しているそうで、それはちょっと解せません。
行政書士という仕事にそういうイメージがあるなら、やめたほうがいいです。
行政書士の仕事のペースは、自分のペースではなく、お客様のペース。
許認可は〆切がありますから、それまでに何が何でも申請しなければなりません。
行政書士より稼げそうなスキルがある人
独立開業の目的はお金だけではない。
とはいえ、お金も大事でしょう。
他に仕事になりそうなスキルがあるのに、わざわざ行政書士(=がっつり稼げる資格ではない)で開業する必要はないでしょう。
でもこれが意外と盲点で、他にスキルを持っているのにわざわざ行政書士で開業したいという人の相談、何回か受けたことがあります。
たぶん資格の学校等が、
「国家資格」
「副業によい」
「自分のペースで稼げる」
といったことを言っているんじゃないかと……少なくとも、うちに相談に来た方々はそう言っていました。
私も〇〇という資格を持っていますが、自由に時間を調整できなくて。
前にも書きましたが、行政書士の仕事は、許認可だったら〆切に追われるのです。
自分のペースで自由に仕事をしていると、〆切に間に合わず、お客様に多大な損害を与えることになります。
謝って済めばよいけど、損害賠償が待っているかもしれません。
せっかく、生かせるスキルがあって、そちらのほうが稼げるなら、もう一度考えなおしてみたらいかがでしょうか。
行政書士の仕事、そんなに自由ではありません。
自分で仕事のモチベーションを保てない人
ここだけちょっと、上の3つとは趣を変えて。
行政書士に限らず他士業さんでもそうですし、まったく士業ではない、例えばエンジニアの世界やらデザイナーなんかもそうだったりしますけれども、
「お願いしても仕事してもらえなかった」
というお客様の声、意外と多いのです。
逃げる、さぼる、怠ける。
そういう人は多くおられます。
これが会社なら、組織ですから、他の人が穴埋めしてくれるかもしれませんし、上司が指示してくれるかもしれません。
でも独立開業したら、自分で自分のマネジメントをしなければならないのです。
資格の勉強のときに、「モチベーションが!」とやる気を失いがちだった人は、要注意でしょう。
やる気なんていうものに左右されず、やる仕組みを作るところからスタートすべきです。
やる気なんていう、あるんだか無いんだか分からないものに振り回されていては、仕事になりません。
さぼっても誰も後始末をつけてくれないのですから。
まとめ 独立開業=自分のペース ではない
行政書士でガンガン稼いで、自由に時間を調整できている人もおられます。
許認可業務以外をやっている人に多い印象です。
それから補助金業務が多い人もおられますね。
初めから狙って組織を作り、数千万円を稼ぐ人もおられます。
でも、そうした人は、本当に少数派です。
行政書士の資格は、食えない資格ではないと思います。
でも決して「効率的にガンガン稼げる」資格じゃありません。
自由に時間を使える資格でもありません。
お客様の許認可の〆切に追われているのが、ふつうの行政書士です。
だから、体調が悪かろうが気分が乗らなかろうが、自分でスケジュールを調整し、〆切に間に合わせなければ仕事になりません。けっこういろんな能力を要求されるのです。