こんにちは!トマト行政書士事務所の菊地です。
私も独立開業当初は、よくセミナーや研修を受けていました。
今は、行政書士会が開催するセミナーのうち、自分に関係がありそうなものを選んで受講したり、知っている先生が講師等をするときに受講する程度。
あとは、日本行政書士会連合会中央研修所の動画研修は今も受講しています。
個人的には、どちらかというと講師にまわるほうが増えた気がします。
今回は、私がこれが最良ではないかと考える、セミナー・研修の受け方を書きます。
ところで、FacebookやX(Twitter)でよく批判が展開される「ひよこ狩り」。
これをお読みのあなたは、ひよこ狩りを知っていますか?
ひよこ狩りというのは、独立開業したばかりの「ひよこ」同業者を狙って、同業の先輩が、高額なセミナーを開催するものです。
こうした行為は、たびたび批判に晒されています。
批判の声は主に
「同業者に向けて商売するな」
というものと、
「そんな程度の情報を高額で売り付けるな」
というものの2種類が多いようです。
ただ、何がひよこ狩りなのか、定義が人によってまちまちなので、批判の矛先も人それぞれです。
「同業者向けの有料セミナーは全部NG」という人も居れば、「ある程度の金額以上は酷いんじゃないか」という人もいるわけです。
あいつはセミナー屋だケシカランだの、実務をろくにしていないくせにだの、いやあの人は素晴らしいずいぶんお世話になっただの、あの人が居なかったら今の成功は無かっただの。
それぞれが思い思いの「ひよこ狩り」を想定して、ばらばらに批判してるから、話が食い違ってますます炎上するわりに全然無くならないという悪循環が展開され続けています。
批判の声があっても、セミナーを開催し続ける人もいます。
別に違法なわけではないし、誰かが取り締まるわけでもなし、周りから指摘されたって「悪いことをしている自覚」なんて無いでしょうから、当たり前でしょう。
行政書士は、なかなか求人がありません。
行政書士業務を全く未経験で開業してしまう人が多いのです。
他人事みたいに言ってるけれど、実際私もそうでした。
だから、開業者本人が抱える「こんなスキルで大丈夫なのか」という不安と、セミナー開催者の「経験者が語る場」「経験に基づく業務知識」の提供は、ちょうどぴったり合うのです。
受講者としては、高くてもなんでも、不安な気持ちに寄り添ってもらえば「お世話になった」という気持ちにもなるでしょう。
そういえばあんなにお金を取って、あのぐらいの情報で……と気が付くのは、数年後のことになるのではないでしょうか。
独立開業したばかりの人にスキルを学ぶ場を提供したいというセミナー開催者も居れば、独立開業したばかりの不安に付け込んで儲けようという人も居ます。ひよこ狩りらしきものは、本当にそれぞれなのです。
今回は、ひよこ狩り対策も含めて、私自身が考えるセミナー・研修について書きますので、どうぞ参考にしてください。
なお、個人的には、高額なセミナーを受けたり開催したりするのは個人の自由だろうと思っています。
違法じゃないのですから。
そもそも「高額」かどうかっていうのも、個々人の価値観によります。
独立開業すれば個人事業主です。
事業主であり、消費者じゃありません。
個人事業主が騙されてセミナー料金を支払ったとしても、基本的には消費者センターは相手にしてくれません。
事業主は消費者ではなく、消費者保護の対象とはならないのです。
だから自分で判断するのが大事です。
騙されたと思ったら自分で弁護士さんに依頼するなり何なりして、自分で戦わないといけません。
とはいえ、開業したばかりで行政書士の業界をよく知らないところに、業界トップらしい人とかご意見番ポジションの人とかから声をかけられたら、受講してしまうかもしれないのも分かります。
何もわからないところへ「これを受ければ依頼が来たときに余裕で対応できるよ」なんて言われたら、受講したくなるでしょう。
この記事が、冷静な判断のお役に立てたらうれしいです。
業務知識の習得目的なら、高額セミナーはいらない
行政書士向けの研修、特に業務研修。
独立開業者初心者向けに、業務知識を販売したり、書式集(様式集・フォーマット)を数万円で販売したり……。
あのようなものは、あんまり高いものはまず不要でしょう。
特に書式集は、役所のホームページからダウンロードできるのが通常です。
同時に記入例や手引きが掲載されていることが多いです。
実際、提出先の役所ごとに書式が違うのが通常でしょうし、販売されている様式が「使える」ものなのか疑問に思います。
入管は全国共通書式ですが、その共通書式がWEBサイトに掲載されています。
いずれにしてもそうしたものを無料でダウンロードすれば十分でしょう。
業務用のソフトウェアはまた別の話ですよ、もちろん。
例えば建設業許可申請のためのソフトウェア、内部に書式が用意されていますが、あの手のソフトウェアはきちんと各自治体独自書式に対応しています(例外もある)。
ここでいらないと言っているのは、ソフトウェアではなく、「書式販売」です。
よくあるのですよ、独立開業書式集セットとか。
各都道府県行政書士会のホームページには、会員としてログインできる会員向けサイトがあります。
そこにも、行政書士向けの書式が掲載されていて、ダウンロードできるようになっています。
どのような様式があるかは各会によるけれど、新潟会ですと汎用委任状や建設業、自動車、農地転用関係の書式等が掲載されています。
高額販売されていたという行政書士向け書式集の中身を見せてもらったことがありますが、委任状の記載内容(委任内容)の書き方が
これって法的にどうなの……え?これをそのまま使えって言うの……?
そのまま役所に出すには問題がありそうでした。
高額で販売されているから良質・法的に通用する内容とは限らないし、それを使って仕事がダメになったとしたら、その責任は自分で負わなければなりません。
こういうのがまさにひよこ狩りなのでしょう。
行政書士なら連conと行政書士会が開催する研修を活用
日本行政書士会連合会が運営する「連con」は、ログインすると行政書士向けの連絡事項や書式集があります。
また、日本行政書士会連合会中央研修所が運営する研修サイトには、業務研修が豊富にあって、オンラインで動画閲覧可能です。
資料もダウンロード可能となっています。
ここにある研修は本当に数が多いし、内容も豊富だから、高額なセミナー・研修を受ける前にまずはここを確認して視聴したらいいと思います。
動画閲覧は無料で可能です(もちろん通信料はかかるわけですが)。
それから、各都道府県行政書士会や各支部が主催する研修会にも、優良な研修が多くあるので確認してください。
無料の場合もあるし、数千円の参加費のものもあるけれど、高額なセミナーを受けるよりはずっといいと思います。
特に東京都行政書士会が開催する在留関係の研修は、その第一人者たる某弁護士の先生が講師となって開催するものがあって、新潟に住むわたくしとしては「いいなーうらやましいなー」と思っています。
※その弁護士の先生が主催するセミナーなら、ハイレベルですが、ある程度のお金を払っても受講するといいと思います!中央研修所のサイト内にも、かの先生の動画があるはずです。
特に独立開業直後で、業務知識に自信がない状態であれば、こうした研修はとても勉強になります。
まず、興味を持った分野の研修動画を全部、中央研修所の研修サイトで閲覧してみましょう。
ただ漠然と「興味がある」状態から、一歩も二歩も前に進むことができると思われます。
同業者の高額セミナーは、情報収集目的で行くな
一方で、高額なセミナーの受講や開催にも、意味があると思っています。
ただ、今までに書いたとおり、ある程度の業務知識のためなら別に高額なセミナー等を受ける必要は無いと思っています。
結局ひよこ狩り・高額セミナーが悪いものか良いものかっていうのは、開催者が
「大したものじゃないのに不当に高く売りつけて儲けようとしている」
のかどうかが重要なように思うのです。
でも、開催者がどう考えているのかなんて内心の問題です。
どんなに周りから見て
「それってひよこ狩りだよね」
と思っていても、開催者が
「これはみんなが必要としているに違いない!」
と思い込んでいたら、それって良いものなのでしょうか?悪いものですか?
良いのか悪いのかっていうのは、人間が個々人で判断するものだから、なんとも言いようがないのです。
絶対悪!!なんてありえないでしょう。水戸黄門じゃあるまいし。
(平成以降生まれには水戸黄門だの勧善懲悪だのって通じないのかしら。)
独立開業直後なら、まず日本行政書士会連合会中央研修所の研修サイトで、動画研修を受ける。興味のある分野は全部見る。
まずこれをやりましょう。
やりましょうって言いましたからね、私。やりましょうね。特に未経験独立開業の方。
さてその次に
「同業の先輩がセミナーに誘ってくれた!けっこう高いけど、業界トップの人らしくてすごい肩書だ」
とか
「面白そうなセミナーがあるけど、高いな。どうしようかな」
といったときに、どうするか。
それは、自分で判断するのです。
研修動画はひととおり見たんだから、そのうえで何か得るものがありそうなら受講すればいいと思うのです。
自分のお金なんだから、自分で判断して使えばいいのです。
都道府県会ごとに研修の内容が違うから、あなたの所属会ではあまり研修が開催されないかもしれないし、やりたい分野の研修が見当たらないかもしれない。そこに欲していた内容の研修があったら、多少高額でも受けてみてもいいでしょう。
払える程度の金額ならば、お金払ってきちんとした知識を得られるなんて御の字。
我々士業って、知識習得も仕事ですから。いわば仕入れです。
ただ。
私なら、業務知識目的では、受講しません。
業務知識目的「だけ」では受講しないと言い換えるべきか。
これから大事なことを言います。
行政書士として開業して食っていくのであれば、セミナーを受ける側じゃなくて開催する側に立つべきです。
実際にあなたがセミナーを開催しなくてもいいのです、全然。
ただ、我々行政書士は、お客様の問題解決を提供するのが仕事です。
問題解決の糸口の提供が仕事です。
つまり、お客様の抱えている何らかの不安や問題を取り除く、セミナー主催者側=教える側の立ち位置で仕事をしていくべきです。
だから、「どうしてそのセミナーに興味を持ったのか」自分で分析して、セミナーで教えてもらえそうな内容に見当をつけて、なるべくその周辺の知識は予習してから受講してみましょう。
あとは、セミナー開催中は、知識のインプットじゃなく、セミナー講師がどんなふうに話しているか?周りの受講者はどこで興味を持っているか?なんでみんなこのセミナーに金を払うのか?に注目するのです。
さらに贅沢言うと、服装と髪型と動き方、話すスピードなんかも参考になるでしょう。
そこが、あなたがお客様を相手に仕事するときに、きっと役に立つポイントです。
自分が見当を付けた内容と、実際のセミナーの内容の違いはどうでしたか?
知識が不足していても、だいたいこんな内容かなって予想するぐらいはできます。
その予想と同じでしたか?違っていましたか?
もし違いがあるなら、そこが高額セミナーだからこその「違い」なのかもしれません。
言い換えればメシのタネになるポイントです。
みんなが興味を持つポイント、そこにどうやって興味を持たせているのかよく見るのがとても大事です。
そこが自分自身の仕事に反映されるのです。業務知識は当然あるものとして。
研修・セミナーのうま味は「その後」にある
さて、高額な研修なりセミナーなりを受講して、あるいは各都道府県行政書士会が主催する研修でもいいのですが、とにかくその後に懇親会がある場合があります。
私みたいに育児中で夜の外出が難しいんでなければ、研修後の懇親会は絶対に参加したほうがいいでしょう。
研修やセミナーで話を聞くけど、そこは一般的な内容なのです。当たり前ですが。
研修会だけのオフレコ発言もあるかもしれないけれど、それはあなた自身への助言ではありません。
でも、懇親会でうまく講師の人のそばに座れたら、あなた自身にあててカスタマイズされた助言を得られるかもしれません。
例えばこの私が今書いているブログだって、一般向けな内容にならざるを得ないわけで、これを読みながら中には
「いや、自分は全く未経験の独立開業ではないし…」
とか、個別の自分自身の状況にいまいち合わないなぁっていう人がいるかもしれません。
そういうものを個別に解消できるかもしれない機会が、懇親会です。
だから、懇親会には出るべきです。
「飲みニケーションはめんどくさい」
じゃないのです。別に会社の上司部下じゃないんだから、義務で参加するようなものじゃありません。
懇親会っていうものは、もっと能動的に参加するものです。
そして、講師の先生から助言をもらいましょう。
ただ、あんまりしつこく付きまとったらだめです。
講師の先生だって、いろんな人との人脈が欲しくて講師にいらしたのかもしれないのだから、その邪魔になったらだめです。
短く的確に質問し、相談をして、若干程度の時間で切り上げる理性が必要です。
アルコールでつぶれてる場合じゃないから気を付けましょう。
うまく仲良くなれて、もっと会話する時間がもらえるならラッキーと思いましょう。
まとめ セミナーの目的を考え直そう
さて、まとめ!
1.書式はダウンロードしよう。
2.業務知識習得のための研修は、日本行政書士会連合会中央研修所研修サイトの動画研修や、各都道府県行政書士会主催の研修を受講しよう。
3.高額な研修、セミナーにも意味はある。どうしてそのセミナーの受講者がいるのか?何に興味を持たれているのかに注目しよう。
4.懇親会には能動的に参加して、助言をもらおう!