
コネなし経験なし開業…無いなら作ろう
前回は「カネなしコネなし経験なし開業」カネ偏ということで書きましたが、今回はコネと経験編です。
本記事では、行政書士事務所開業を考えている方で、開業や起業といったことを全くしたことがない方に向けてコネなし経験なし開業を軌道に乗せるための工夫を紹介しています。
コネなし経験なし開業ってどうなんだろう?と不安に思っている人と、コネや経験なし開業の意味がそもそも分からない人にきっとお役立てできる内容です。

コネや経験なしでの開業をうまく軌道に乗せるにはどうしたらいいですか



コネとか経験を作るように意識してみたらどうですか?
トマト行政書士事務所には、たまに、事務所見学ご希望の申し込みがあります。
※現在は、アポなし突撃や来客中の居座りなどがあったため、事務所見学は有料としております。
そこで「カネなしコネなし経験なし開業なんです」というご相談を幾度となく受けてきました。
行政書士の開業ブログなどを見ても、「カネなしコネなし経験なし」をうたったブログが多数あります。
しかし、たまにこういうご質問もあるのですよ……「コネや経験って、やっぱりあったほうがいいんですよね?」
そもそもコネや経験が無いと、なんで困るんだ?
そりゃーベテランになってから開業したほうがいいだろうけど、行政書士資格に合格したんだし、なんとかなるんじゃないか?
……といったことをおっしゃる見学者さんが居るのも事実です。
そこで、コネや経験なしの開業が少しでもうまくいくような工夫は、どんなものが考えられるか。
あわせて、コネや経験が無いということがどういうことなのか、考えていきましょう。
コネなし問題
起業だの開業だのというブログを見ると、やたらと「人脈」という言葉が出てきます。
行政書士の開業ブログで「カネなしコネなし経験なし」ってよく出てくるのと同じです。
「人脈」だの「コネ」だのとよく言いますけど、これはただ単純に知り合いが多いという意味ではありません。
特に仕事でいうコネは、利害が絡む人とのつながり、物事がうまく運ぶのに役立つようなつながりのことです。
コネは新しい情報や仕事をもたらしてくれます。
コネは依頼者、新しい顧客という意味合いではないのがポイントです。



お客様そのものというより、お客様を紹介してくれるキーパーソンのような人や、同業者で新しい情報に詳しい人とうまく付き合っていけるつながりのほうが「コネ」かもしれません。
コネが無いと何が困るの?
コネと称するものが何なのかが分かったところで、もう一度カネなしコネなし経験なし開業について考えてみると……
行政書士の「カネありコネあり経験あり開業」って、「貯金がある人がどこかの行政書士事務所に勤務し数年仕事してからその事務所を承継する」ぐらいしか思いつきません。
他にあるのかな。
行政書士事務所で勤務したあとで独立開業する場合はともかく、試験合格後に独立開業するのであれば、コネなしがふつうと言えるでしょう。
開業当初は仕事がない=仕事につながるコネが大切に思えるかもしれませんが、しばらく事業を続けていくと、仕事の上の情報につながるコネの重要性に気が付きます。
行政書士事務所等で勤務したあとの独立開業だと、仕事につながるコネは無くても、情報につながるコネを持ったまま独立できるかもしれません。
どんなにアンテナをはっているつもりでも、仕事上の情報を見逃すことはあり得ますから、そうした情報をもたらしてくれるコネは大事にしたいものです。
無いコネは作ろう
某ベテラン行政書士さんいわく……



コネなし開業ですーって言っておきながら、行政書士会の会務やらない、総会に出ない、異業種交流会でも商工会議所でもなんでもいいけどとにかく出ない、何か趣味のサークルに出るでもなんでもない、ホームページもろくなのを作らない、SNSやらない……ってなると、さすがに「みんなどうやってあんたのこと知ればいいの?」ってなるよね
そう、これは私も言いたい。
行政書士事務所を見学にいらっしゃるような人は、それなりに行動力や飛び込む勇気がある人だろうから、まだ大丈夫だとして。
開業したんです、コネも何もないんです、でも何も動きません!……では、仕事は来ないし、情報も来ないです。
やっぱり、他の人と知り合うような場にはどんどん出て行った方がいい。
異業種交流会は「仕事くれくれ」と思っている人があつまるケースが多いから、仕事につながるかどうか分からないので、内容によるかな。
私が知っている同業者で営業の天才と崇めている某先生は、どんな異業種交流会についても、
「最終的に誰とつながりたいかを意識して参加する」
と断言していました。
彼は天才なので、全く初めて紹介された参加者100~200人規模の異業種交流会で、初参加のときに目指す幹事と会の代表者と仲良くなり、次回以降はしばらく司会として参加したと言っていました。
こういう天才っているのですよ。
もしコネが何も無いし勇気も無いしということであれば、行政書士会の会務に参加して同業者とのつながりを作るのもいいでしょう。
※行政書士会は都道府県単位でけっこう雰囲気が違うようなので、幸運をお祈りします。
同業者とのつながりは、仕事をもらうコネにはなりにくいけれど、情報が来るかもしれません。
一番いけないのは、誰とのつながりも作らないことです。とにかく外へ出て、誰かとのつながりを作りましょう。
経験なしをカバーするには
一方、経験の無さをかんたんに「経験を作りましょう」とは言えません。経験の無さは、依頼された仕事の失敗につながります。
行政書士業務について「役所へ行って聞きながら書類を作ればだれでもできる仕事」と揶揄する声をよく聞きますが、実際のところ、行政書士業務はそんなに簡単ではありません。
例えば、許認可で行政書士に依頼する場合。自分でやれるものを敢えて行政書士に頼むのは、どんな理由が多いと思いますか?
「とても急いでいて自分でやったら間に合わない」「とても忙しいからやる時間が無い」「役所で相談したり手引きを読んだりしたが自分の場合許可がとれるかどうかよく分からない」「役所で、許可になるかどうか分からないからとにかく申請してみてと言われた、心配だ」
……こんなところでしょう。
急いでいるお客様には、必要な書類を、タイミングよくお伝えしなければなりません。なぜならば、書類によっては取得してからの有効期限が決まっているのです。
また、許可になるかどうか分からないケースは、慎重に許可を満たすための証拠になる証明書を集めなければなりません……書類が集まらない場合は、代替書類を用意したり、理由書を作成したりしなければなりませんが、理由書なんて役所は教えてくれません。
こんなふうに、手引きを見てただ書類を埋めればいいのではなく、許認可に至るまでの全体像を把握している必要があります。また必要書類も、なぜ必要なのかを考えなければ、代替書類はなかなか思いつきません。代替書類を提出することにするのなら、勝手に提出するのではなく、申請前に役所に事前に打診しておくことも必要でしょう。
段取りは、経験があってこそです。手引きどおりにのんびり進めていい許認可のご依頼なんて、なかなかないでしょう。
では、そうした経験の無さをどうカバーするか?
研修・セミナーに参加する
王道ですが、研修やセミナーに参加し、常日頃から研鑽を積むことはとても大切です。まず行政書士会が主催する研修がありますから、積極的に参加しましょう。
各都道府県行政書士会が主催する研修のほか、日本行政書士会のオンライン研修サイトがあり、行政書士であれば動画を閲覧し資料を見て、オンライン研修を受講することができます。こちらもとても参考になる研修動画が豊富にありますので、興味がある業務の研修を全部見てみるのもいいと思います。
また、行成塾もいいと思います。(塾頭の四本先生にお断りせず勝手にご紹介しております。)このサイトには、行政書士会ならではの悩みの解決につながりそうな研修動画が豊富にあります。会費がとても安価であることも素敵ですが、行政書士会が主催する実務研修とは違った切り口であることも魅力です。
行政書士を対象とした研修やセミナーは、非常に有益で高額なものもありますが、「ひよこ食い」といって開業予定者や初心者向けの高額で怪しいセミナーが多くあることは事実です。まず業界について知り、ある程度分かってからより研鑽を積むために高額なセミナーを申し込んでもいいのではないでしょうか。
手土産持参で先輩に頼み報酬も支払う
経験の無さをカバーするには、いわば「他人の経験を借りてくる」とでもいえるような方法があります。つまり同業先輩に菓子折り持参で頼み、例えば報酬の全額~何割か支払うことを提示するなどして、教えてもらう方法です。
先輩にどこまでお願いするのかによって、金額は違うでしょう。
ご自分で教えてみればわかりますが、他人の作成した書類を確認したり、それをもとに教えたりするのは、とても難しいです。自分で書類を作成するほうが、よほど楽です。そのあたりも踏まえて、前記のとおりの「コネ」を生かして、お願いしてみるのがいいと思います。
難しいので、案件全体の確認だと、なかなか引き受けてくれる人は居ないかもしれません。しかし、ポイントだけでも教えてもらえると、とても助かると思います。
とにかく様々な方法で無いものをカバーする
「コネなし」「経験なし」の結論
コネが無いなら作ろう。
経験が無いなら経験をカバーするためにより専門知識を身に着け、いざというときに相談できる先輩とつながりを作っておこう。
これは行政書士業務でも必要な考え方ですが、何かが無いときは、その代わりになるものを考えるのです。
何か提出する書類が無い……例えば古すぎてもう取得できないとか……その場合は、その書類で何を証明しようとしたのかなぜ提出しなければならないのかを考えます。そして、代わりに何であれば証明できるかを考えて、提出先にこちらから提案するのです「〇〇をこれこれこういう理由で提出できないのですが、代わりにこれとこれを提出すれば証明になりませんでしょうか」
それと同じです。コネが無い、でもコネはこれから作っていくことができますよね。経験が無い、では経験はどんな役割があるでしょうか?専門知識を深めることでカバーできる部分は、専門知識の研鑽を積めばいいのです。経験でなければ分からない部分は、諸先輩にお願いして(忙しければお断りされるでしょうけど仕方ない)、教えてもらうのです。
今まで書いてきた方法の他にも、たくさん方法はあります。ここに書いたのは、私が実践してきたものの中で、やりやすそうなものをご紹介したにすぎません。
間違いなく言えるのは、考えてやってみること。動かないのが一番ダメなのです。